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「壁量計算」と「構造計算」
こんにちは。
倉敷・岡山で建築家とおしゃれなデザイナーズ注文住宅を建てている建房の小林(史)です。
前回のブログでは「耐震等級」のお話をしました。
建築物の安全性を確認するためには、構造物の荷重に対してどのような力が発生し、どのように変形するのかを計算します。これを「構造計算」といいますが、一般的な規模の木造住宅においては、より簡易な「壁量計算」が認められています。
「構造計算」とは、柱の種類、金具の種類、外壁材、断熱材などを踏まえ、その家の重さに合わせて耐震性や強度をシミュレーションする計算方法です。
この後、説明する壁量計算と比較すると、計算にはあらゆる情報が必要になりますので、それだけ計算方法も複雑になります。ただその分、地震や台風、雪、衝撃などあらゆる荷重に対し、壁のみならず柱や梁、床などが問題のない強度なのか確認できます。
上記のような建物は「構造計算」に代わる簡易な計算方法である「壁量計算」が認められています。要は、一般的な2階建て住宅であれば難しい計算をしなくていいということです。
壁量計算とは、地震や台風などの自然災害に対して問題のない耐力壁の仕様を決めるための計算方法です。読んで字のごとく、壁の量を計算します。
実に日本の一般木造住宅の95%以上が、壁量計算で耐震強度を計算しているといわれています。
震度7を2回続けて観測した熊本地震では、壁量計算によって算出された壁量では耐震性能の基準に対して不足してしまう傾向があることが発覚しました。
つまり、壁量計算によって算出された壁量では、場合によっては表示されている耐震等級が発揮できない恐れがあるのです。
(出典:耐震住宅100%実行委員会)
構造計算と壁量計算の違いは、上記の通り歴然です。
「耐震等級3」は建築基準法の1.5倍の強度があるものと定義されていますが、構造計算による耐震等級3だと2.44倍を確保できます。また、構造計算であれば「耐震等級1」でも建築基準法の1.5倍を超えてきます。
では、なぜこれほどまでに安全性に違いが出るのに、構造計算がされていないのか。
それは、工務店やハウスメーカーの事情にあります。多くのメーカーでは、構造計算を外部に委託しなければなりません。構造計算専門の建築士というのがいるわけですね。
外部に委託するとなると、それだけ時間がかかります。小さな工務店だととくに、着工から引き渡しまでもできる限り短くしたいと考えるものです。また構造計算には、時間のみならず費用もかかるため、お客さんにその費用を負担してもらうくらいなら、他のことに使ってほしい、還元したいという気持ちもあるかもしれません。
近年では、住宅の省エネ化が進んだことから建物が重量化しています。太陽光パネルを載せたり壁をサイディングにしたりすることで、家がどんどん重くなっているのです。壁量計算によって算出される壁量が今の住宅の実態に合っていないということは、ここ数年、審議されてきました。
2022年4月には木造住宅の壁量計算を可能とする「4号特例」の縮小法案が国会に提出され、成立。2025年にも省エネ基準適合義務化と合わせて「4号特例」の対象建築物が大幅に縮小される見込みです。今後は一般的な木造2階建て住宅においても、構造計算が必須になっていくものと考えられます。
成立した改正法では、平屋かつ延べ床面積が200平方メートル以下に限ってこの特例は残り、木造2階建て住宅は特例の対象外です。実際に法律として施行されるまでには時間がかかりますが、近い将来、新築の木造2階建て住宅は安心ということになりそうです。
弊社、建房では全棟で「構造計算」を行い耐震等級3以上の強さを確保しています。住宅性能のこと、構造のこと、耐震性のことで疑問・質問がありましたら、お気軽にご相談ください。
次回のブログでは「長期優良住宅」のお話をしていきますので、どうぞお楽しみに!
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