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長期優良住宅の“本質”について考える
こんにちは。
倉敷・岡山で建築家とおしゃれなデザイナーズ注文住宅を建てている建房の小林(史)です。
今回のテーマは「長期優良住宅」です。
最近では多くのメーカーも当然のように「長期優良住宅」を取得しており、実際に認定戸数は右肩上がりです。
しかし、長期優良住宅の“本質”を考えれば、必ずしも「長期優良住宅にすべき」とはいえません。
長期優良住宅制度は「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅の建築・維持保全に関する計画を認定するものです。現在、新築される一戸建ての約25%が長期優良住宅の認定を取得しています。
長期優良住宅とは、次の5つの措置が講じられている住宅を指します。
認定基準は、劣化対策や耐震性、省エネルギー性など10項目。着工前、着工後の申請や点検とともに、建築後も30年以上にわたって維持保全における定期的な点検と調査、修繕、改良、記録が求められます。
(出典:住宅産業協議会)
「長期優良住宅=長期保証」と捉えている方も少なくありませんが、両者は別物です。
長期保証というのは、工務店やハウスメーカーが付ける住まいの「保証」。長期優良住宅は、先述通り法律に基づいた「認定」。混同しやすい理由は、いずれも住宅産業協議会による「住まいのメンテナンススケジュール」に基づいて考えられているからです。
このスケジュールが、長期認定住宅のリフォームの目安にも、あらゆるメーカー・工務店の長期保証の目安にもなっています。
長期保証で注意しなければならないのは「60年保証」や「100年保証」には“要件”があることです。要件とは、たとえば「20年後にこの設備を交換する」「30年後にリフォームする」といったもの。つまり、定期的な修繕やリフォーム、メンテナンスが長期保証の前提になってくるわけですね。
ただ、リフォームや修繕をすれば、保証が伸びるのは当然のこと。私はリフォーム業界にいたこともあるので……この辺りはちょっとずるい仕組みだな(ボソッ)と個人的には思います。
長期保証については、しっかりと内容や要件を確認し、数十年後に決して安くない費用をかけたリフォームや修繕ができるのか?あるいは保証を伸ばすためにやるべきなのか?冷静になって考えてみてください。
長期優良住宅には、様々なメリットがあるとされています。しかし、メリットといわれるものの“本質”を見るようにしましょう。
たとえば、上記にある「地域型グリーン化事業」という補助金は、予算枠が非常に少ないので抽選のような状態になってしまっています。
また、フラット35の金利優遇は、長期優良住宅でなくとも「認定炭素住宅」でも受けられます。そもそも今は圧倒的に変動金利を選択する方が多いものですので、これらが本当に自分たちにとってメリットがあるのかという“本質”を考える必要があるでしょう。
税金の特例措置についても“本質”を見るべきだというのは同様です。長期認定住宅は、住宅ローン控除による控除対象限度額が5,000万円まで引き上がります。しかし、これだけの借り入れをしないのであれば、まるで意味をなしません。ご夫婦で共有とし、それぞれが住宅ローンを組むとすれば、各々がご負担になるのはさらに少額にもなります。
長期優良住宅でなくても、ZEH住宅であれば控除対象限度額は4,500万円。省エネ基準適合住宅でも4,000万円です。お借入れ金額によっては「これで十分」というケースもあるはずです。その他の特例措置についても、差し引き数千円程度の節税であったり、該当しなかったりする場合がありますので“自分たちにとって”どんなメリットがあるのかしっかり確認することが大切です。
固定資産税の減税措置延長については、恩恵が大きいと思います。十万円以上の節税効果があるでしょう。しかし、そもそも長期優良住宅の申請には決して安くない費用がかかります。申請には、様々な計算をしたり、認定を受けられるように調整したりする作業が伴います。
これら申請業務の平均予算は30万円ほど。岡山で、2年間固定資産税の減税措置が延長してこの金額が節税できるかというと、ほとんどのお住まいができないでしょう。
つまり、長期認定住宅の認定を受けることで「プラス」になるのは一部の限られた方ということです。
冒頭の話に戻りますが、それにもかかわらず、建築後も30年以上にわたって維持保全における定期的な点検と調査、修繕、改良、記録が求められるのです。さらに、これらの対応をしなかったときには30万円以下の罰金に処せられることもあります。また、計画に従ってメンテナンスを行わなかった場合には、それまでに得た長期優良住宅の認定を条件とする補助金や税優遇措置で得た費用の返還を求められる可能性もあります。
これら一種の“制約”が果たして本当に自分たちにとってメリットになるのか。今一度、考えてみましょう。
長期優良住宅のすべてを否定するわけではありませんが、実際に、建築後、計画通りにリフォームや修繕がされているか抜き打ち検査に来られるような事例もあったと聞いています。しかし、たとえば将来的に売却されるときには、長期認定住宅であることが付加価値となることも当然ながらあるわけです。
どんなことにも共通することですが、物事の片方の面だけを見るのではなく、多角的に見て、自分たちのケースに落とし込んで、検討することが大切です。住まい選びには、このように判断しなければならない局面が多く出てくるものでもあります。
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